平均結婚年齢は既に結婚のピークを過ぎている
平均は必ずしも代表値ではない。
ある集団の代表値には平均値をよく使います。政府が発表する結婚平均年齢や世帯の平均貯蓄額なども、平均値を代表値に用いています。統計学的には平均値には分布が正規分布の場合に代表値にふさわしいものですが、分布が正規分布していない場合には誤解を与えます。
平均結婚年齢は何を示しているのか?
この年齢を過ぎると、適齢期を増えると考える人が多いかと思います。しかし、政府の結婚のデータは婚姻届を出した人数に基づいて算出しています。
ここで1番の問題は女性が結婚年齢は法律で16歳からと法律で決まっているので、分布に歪みが生じています。
実際のデータを見てみましょう。2014年の政府の発表しているデータでは総数444,219人で分布は以下の表の様になっています。
|
例数 |
% |
累積% |
19歳以下 |
10,058 |
2 |
2 |
20~24歳 |
77,178 |
17 |
19 |
25~29歳 |
184,928 |
42 |
61 |
30~34歳 |
104,818 |
24 |
85 |
35~39歳 |
47,079 |
11 |
96 |
40~44歳 |
15,068 |
3 |
99 |
45~49歳 |
3,399 |
1 |
100 |
50~54歳 |
973 |
<1 |
<1 |
55~59歳 |
351 |
<1 |
<1 |
60~64歳 |
184 |
<1 |
<1 |
65~69歳 |
102 |
<1 |
<1 |
70~74歳 |
45 |
<1 |
<1 |
75~79歳 |
17 |
<1 |
<1 |
80歳以上 |
19 |
<1 |
<1 |
このデータから29歳までに半数以上の人が結婚していることになります。平均は29.4歳です。
統計的には95%の範囲中に入れば正常ですので、39歳までが適齢期とも言えます。

図1 花嫁のブーケ
適齢期は一番結婚の多い年代とすると25~29歳になります。
ここまでは半分冗談ですが、間違った結論を導く可能性が高いのは平均年収です。
統計の中で平均値が当てにならない例として以下のような話があります。ある小さなバーお客の平均年収が3億円と言うことが判明しました。理由はなぜでしょう。お客の人数は100人と仮定しましょう。顧客名簿にビルゲイツ(年収3兆円として)が入っていると後のお客さんの収入がなくとも、その店の平均年収が3億円になります。
つまり、平均値は高収入の人のデータによって高くなる傾向があるということです。平均賃金が上がったということも確かにデータですが、少数の人が株式などによって多大な収入があれば実現可能です。しかし、低賃金の人が逆に下がっても平均値に影響を与えることは少なくなります。
この場合には代表値を比較するよりも、各年収層にわけて、それがどのように変化するかを見ないと変化を正確に表すことができません。
基準値と病気と判断する値
健康診断の様々な定量値は正規分布していることは明確です。(1部の検査値はログ変換すると正規分布します)

図2 臨床検査のイメージ
基準値は標準偏差の2倍を超える、あるいは下回る場合には基準値からはずれていると言います。
この考え方で行くと、私はすべて基準値が正常という人はかなり少ないということになります。例えば20項目の検査を受けてすべて基準値以内に入る確率は0.95の40乗=0.12となります。100人に12人です。
病気に関してはその値から治療が必要になるとして各疾患のガイドラインが定めています。
抗生物質のように血中濃度が殺菌濃度以上になると効果を示すものは比較的簡単ですが、生活習慣病の食事を決めるのは実は大変です。特に予防の場合は一番難しくなります。
ビタミンEの実例
ビタミンEは抗酸化作用があり、心血管イベントの発生率を疫学的に有効であることの証明がたくさん出ました。
しかし、実際にビタミンEを飲み続けても心血管イベントの発生率は減ることはないことは複数の二重盲検比較試験は証明しました。
エビデンスのレベルは低い方から動物実験で効果がある、症例報告がある(権威のある医者が有効例を持っているときに同じような発言をします)、疫学的な効果が証明されている、適正な質と量を持っている二重盲検試験が行われるとなります。
最も信頼しうるエビデンスは複数の二重盲検試験が行われていて、その結果がプラスマイナス両方に出ていても、まとめて、検討した結果プラスであるということです。
食塩の摂取量はどれだけが正しいか
実は食塩の制限量を5gとすることは、疫学的なデータでは明らかになっています。しかし、介入試験では9gに抑えただけで血圧が下がることしかデータがありません。
1957年に行われた世界7か国共同で行われた、どのような食事が心血管イベントが低いかを国別に比較した試験からギリシャと日本の食事は心血管イベントが少ないことが分かりました。この時代の食塩摂取量は10gを超えています。
余談ですが、ギリシャの食事はその後、色々な疫学的試験、介入試験が行われて、「地中海式食」としてWHOが推奨するものとなりました。
日本食は和食として世界無形文化に仲間入りしました。しかし疫学研究や介入試験特に介入試験がないことから、日本以外の国でガイドラインに載せている国はありません。
【参考資料】
平成26年人口動態統計月報年系(概数)の概況 統計表
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/index.html
新たな検診の基本検査の基準範囲
学会・論文発表のための統計学 浜田知久馬著 真興交易医書出版部(2012年)
The Seven Countries Study
http://www.sevencountriesstudy.com/about-the-study/
橋本壽夫 「食塩と高血圧 介入試験」保健の科学 第35巻 第6号 420-422ページ 1993年
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt7/salt7-health-93-06.html